テスト販売をおっかなびっくりで始める②雑司ヶ谷手創り市に出展する
私がはじめてお披露目をするのは、10月1日の雑司ヶ谷手作り市。
当日は自宅を4時半に出発し、運転して現地に向かいました。
出店が決まってから、毎日ドキドキ。
「誰も買ってくれなかったらどうしよう」
そんなことばかりが頭をよぎります。
たくさんエントリーがありそうな雑司ヶ谷の手作り市で「来ていいよ」と選んでくださったのだから、全然だめってことはないだろう。
そう不安がよぎるたびに、自分に言い聞かせ、はげまして、毎日商品の制作をし、当日を迎えました。
受付時間よりも早く現地に到着し、駐車場に車を入れ(駐車場を探すのも、どこに駐車場があるのかわからず、何度もぐるぐるまわりました。道も狭いので、かなりのドキドキ感です)周囲を散歩し、雑司ヶ谷鬼子母神と大鳥神社へご挨拶。
「ここまで来させてくれて、ご縁をいただけて、感謝感謝です」
ドキドキする気持ちを抑えるように、心の中で神様にそう呟いてみると、心なしか落ち着いてくるような・・・来ないような・・・。
ドキドキがとまらないまま、受付時間になり私が出店する大鳥神社に向かってみると、神社の入り口で受付が始まっていました。
私も他の出展者の方と同じように並んで、受付を済ませ、空いているブースを選び、車から荷物を運びます。
先日制作した什器がバラバラにならないと不安になりながら、広げて、その上に持ってきた商品を並べます。自宅で予行演習をしてきたので、並べるのはスムーズです。
一通り並べ終えて、他の出展者の方を見ると、どの方の展示も素敵に見えて、自分よりもすごく見えて、一気に自信がなくなります。
一人で勝手に落ち込んでいると、ぽつぽつとお客さんが来場し始めました。
私のブースの前で立ち止まってくださる方もいらっしゃいました。
「お、お、おはようござます」
きっとひきつっていたであろう笑顔で、立ち止まってくださった方に声を掛けます。
「初めてですか?」
とお客さんに言われ
「は、はい」
必死で答える私。
「そうですよね、はじめてこの作品見たもの」
「実は今日が初めての販売なんです。実はドキドキしてます」
「それはドキドキでしょうね。素敵な作品だから、自信もって」
そしてそのお客さんは、ポストカードを3枚購入してくださいました。
お金を受け取る手も震えている私。
「あ、あ、あ、ありがとうございます」
ついに売れた!
自分で作ったものを売ってお金を受け取る、それは現実味がなく、夢のようでした。
時間が経つにつれて、またいろんなお客さんと話すにつれて、徐々に場所にも、話すことにも、お金をもらうことにも慣れてきました。
「ポストカードは手刷りなので、一枚一枚風合いが違います。色の濃さも違うんです。なので同じデザインでも、好みの風合いを選んでくださいね」
ポストカードを手に取ってくださった方に、そんな声をかける余裕も出てきました。
「そうよね、一枚一枚が違うのよね。わたしはこの擦れ具合が好きだわ」
そう言ってくださったお客様に
「ほんとはもっときれいに擦れるように頑張りたいんですけど・・・」
と、つい本音というか不安に思っていることを口にした私。
するとお客様は
「この1枚1枚違うのがいいんじゃないの。きれいな印刷のものは、他でも買えるんだから」
「え?」
確かに、私も個人的には雰囲気のある印刷物に惹かれます。
雰囲気あるとは、紙の手触りが感じられたり、印刷のに擦れやつぶれがあったりするような印刷物です。
でも商品として販売するとなると、均一でムラがない印刷ができることが必要だと思っていました。
またそれができていない自分の商品を見るたびに、落ち込んだり、不安になったりもしました。
だけど私の商品にお金を出してくれるお客さんは、そういうある意味「完璧」なものを求めているわけでなく、擦れや色むらなど、それらを含めて私の商品を好きだ、気に入ったと言ってくれていることに気が付きました。
この気づきは私の中で、すごく大きな気づきでした。
私は誰かと同じような商品を作るのではなく、私の商品を好きだと言ってくれる人が「これがいい!」と言ってくれる商品を作ることをしていこうと決めました。
お客さんは誰なのか、そしてどんな理由で買ってくれるのかという理由が明確になった以上に、お客さんの声に励まされた初出展でした。